妊娠初期の栄養についての大切な注意ですので、お読みください。妊娠中の食事と赤ちゃんの先天異常の関係が指摘されている栄養素があります。葉酸の不足、ビタミンAや水銀の過剰摂取などですが、特に葉酸は、妊娠中だけではなく、妊娠前からの摂取が勧められています。今日から葉酸摂取に努めてください。


1.葉酸の摂取について

二分脊椎症は、日本では赤ちゃん1万人のうち約4人に起こる歩行困難や排泄障害を伴う脊椎の病気です。妊娠1ヶ月以上前から妊娠3ヶ月(妊娠11週)まで毎日400 μg(マイクログラム)の葉酸摂取を続けると発生が減少します。30年前の英国では1万人に16人と日本の4倍発生していたのですが、葉酸摂取を推進した結果、1万人に1人にまで減少しました。中国などでも葉酸摂取の推進とともに二分脊椎症が著明に減少し、葉酸摂取の重要性は明らかになりました。葉酸はビタミンBの一種で、ほうれん草、ブロッコリー、いちご、かぼちゃなどの緑黄色野菜に多く含まれていますが、水・熱・光に弱いため調理で栄養を損失してしまうことが多く、ふだんからこれらの食材を食べていても不足がちになってしまいます。このため、葉酸はサプリメントで400~480 μg を毎日摂取することをお勧めします。葉酸は、二分脊椎症や無脳症などの神経管閉鎖障害ばかりでなく、口唇裂・口蓋裂や心臓の奇形を減らす効果もあ、貧血の予防効果もあります。当院でお勧めしているサプリメントは鉄分が多く含まれ貧血の予防効果がとても高いですので、妊娠3ヶ月以降も続けることをお勧めします。ただし、摂取量は、1日1000μgを越えないようにしてください。 


2.動物性ビタミンA(レチノール)の過剰摂取について

ビタミンAは妊娠中も必要なビタミンですが、妊娠3ヶ月までの過剰摂取により赤ちゃんの耳の形態異常が増えることがわかっています。妊娠中の必要量は1日2000 IU(600μg)で、上限は1日 5000 IU(1500μg)です。ビタミンAは、通常の食事では、過剰摂取になることも不足することもありませんが、ビタミンAを含むサプリメントにより過剰摂取になる可能性があります。ビタミンAには、動物性食品に含まれるレチノールと、緑黄色野菜に含まれ体内でビタミンAに変わるβ-カロテン(β-カロチンともいいます)があり、過剰摂取で問題になるのはレチノールです。β-カロテンは、ビタミンAの前駆物質であり、ビタミンAが不足すると必要な量だけがビタミンAに転換されるしくみなので、たとえ大量に食べてもビタミンAは過剰にならないので安全です。

【ビタミンA(レチノール)が多く含まれる食品】

 

あゆ(養殖/焼き)  50g 10000 IU あゆ(天然/焼き)   50g 3300 IU
うなぎ(蒲焼)    100g 5000 IU ほたるいか(ゆで) 50g 3200 IU
鶏レバー           10g 4700 IU

あんこう肝         10g

2800 IU

豚レバー         10g 4300 IU

ぎんたら            50g

1800 IU

牛レバー         10g 4100 IU

フォアグラ         50g

1700 IU

 

※ サプリメントと違い毎日摂取するものではありませんので、食事で過剰摂取に なることはありません。

通常は、葉酸単独のサプリメントでよいと思いますが、つわりや偏食などでビタミンも摂取したい方は、マルチビタミンを購入してください。

 

①葉酸のサプリメント

大塚製薬のネイチャーメイドなどの飲む錠剤、明治ビオママのヨーグルト味の食べる錠剤や葉酸入りのお茶などがあります。

②マルチビタミン

ビタミンAを含まずに葉酸が含むものを選ぶか、成分のビタミンAがβ-カロテンであると明記してあるものを選んでください。キョーリン製薬の「葉酸+マルチビタミン」やピジョンの「葉酸プラス」などがあります。 

※当院では「ビーンスタークママ葉酸+鉄」をお勧めしています。葉酸を含むマルチビタミンに鉄分を追加したもので、1日1錠を食べるタイプです。とてもおいしくて安価です。当院受付でお買い求めください。

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当院でお渡ししているパンフレット
ここに記載しているものと同じですが、当院でお渡ししているパンフレットのPDFファイルです。
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3.水銀の過剰摂取について

最近、魚類に含まれる水銀が、魚の種類や摂取量により過剰摂取になり、胎児に影響を与える可能性があるとの警告がなされています。ただし、わが国は、昔から魚を多く摂取する民族であるといっても、通常の食事では、過剰摂取となる可能性は非常に低く、むやみに心配する必要はありません。

 

厚生労働省から、摂取量の目安(http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/suigin/051102-1.html)が発表されていますので、それを参考にしてください。

 

具体的な摂取の目安は次のPDFファイルをダウンロードしてご利用ください。

当院受診時には、同じものをお渡ししております。

 

ダウンロード
「妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項」についてのパンフレット
100601-1.pdf
PDFファイル 3.5 MB

詳しくは、次のページをお読みください。

「日本産婦人科医会ホームページ」-「情報館」-「先天異常部より」 

 

食事と先天異常
http://www.jaog.or.jp/JAPANESE/jigyo/SENTEN/kouhou/food.htm

 

葉酸摂取による胎児異常発生予防
http://www.jaog.or.jp/JAPANESE/jigyo/SENTEN/kouhou/yousan2.htm 

 

 

厚生労働省ホームページ 

 

神経管閉鎖障害の発症リスク低減のための妊娠可能な年齢の女性等に対する葉酸の摂取に係る適切な情報提供の推進について 
https://www.mhlw.go.jp/index.html

 

「日本人の食事摂取基準(2010年版)」
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/05/s0529-4.html 

 

妊産婦のための食生活指針(平成18年2月) 
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/02/h0201-3a.html

 

葉酸と母子の健康を考える会 
http://yo-san.jp/index.html